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熊本の知財をアップデートする(後編)
弁理士 松尾憲一郎さん(松尾知財事務所 会長弁理士)
2021.07.16
知財活動が遅れている地方。熊本もその一つ。戦う弁理士 松尾憲一郎を熊本に招き、熊本発の知財を武器に戦う事業者とつなぐ。また、熊本の知財をアップデートする。フィールドワークスの大切な活動の一つです。
これから、松尾先生と
古家
先生、おいくつになられましたか?
松尾
79歳ですよ。ゾッとするね(笑)。だから、急がないといけない。
古家
先生、出会った頃とそんなに変わらないなという感じはしていますけど(笑)。
松尾
もう80歳だから。まぁ、あとこの先どのくらいなのかな。息子の面倒見て、若い人も育てている。ちょうど目をかけている若い弁理士がいて、熊本はその人に引き継いでいきたいって思ってたりもするんだけど。
古家
そうか、だとしたら、先生、弁理士としての集大成として、これから仕上げていくことって?今のお話だと人材育成ですか?
松尾
私の今までやってきたノウハウを優秀な人材には授けていこうかなと思っている。私のところに来ている若い人たちは幸せ。直伝!だから(笑)。
古家
うんうん。
松尾
よその事務所と違うところは、特許率は95%くらい。商標の登録率に至ってはほぼ100%!
古家
取得率が高いのには理由があるんですよね?
松尾
一点一点、特許が取れるような明細書しか書かない。前例との違いを徹底的に詰める。そうすると中小企業の出願は大体特許になる。どのくらい詰めれば良いのかというレベルがあって、それを提供する。私が全部チェックしているから。忙しいんだけどね(笑)。
古家
先生、忙しいけど見てくださいますもんね(笑)。
松尾
低空飛行すれすれのものでも特許にする。よその事務所との違いは、今は、ここが違うかもしれない。
古家
それは先生の40数年の経験があるからですよね。
松尾
デリケートなやりとりがわかってないとできない。そういう積み重ねを、伝えているよ。
古家
先生、熊本で、勉強会でもしませんか?
松尾
こういういろんな実務のノウハウをね。本当は外には出したくないんだけどね(笑)。
古家
ですよね(笑)。
松尾
熊本でそれを皆さんに知ってもらえるのは嬉しい。よそではやりたくないけど。
古家
中小企業さん集めてやりましょうよ。
松尾
私の夢はですね、熊本で仕事していて、中小企業さんを見ていると発明ができて、そのイノベーションをずっと支えて、実用化まで行って、事業化・起業化できて、そして、あわよくば上場して、そして、世界戦略まで考える!っていうようなね。そんな企業さんが一つでもできればなって。これは、熊本でやりたい!
古家
いいですね!
松尾
古家さんのことをね、知財の知識を持って知財の専門家でやっている人だろうってみんな思っているだろうけどね、古家さんは、知財で生きるか死ぬかという修羅場をくぐってきている。(※)こういう経験をしたことが、君の知財の原点になっているというのを僕は知っているから、それはね半端じゃないわけですよ。身に染みて、知財がどうあるべきかということがわかっている人。現場的で、実務的。そういう思いと経験で知財やっている人は滅多にいない。
古家
そうかもしれない(笑)。
(※古家の実家が経営する布団店。古家は社内で知財を担当し、複数の権利を取得。その数年後、会社倒産の危機に、古家自身で取得した権利がこの危機を救ったという過去がある)
松尾
それを熊本という地で実践しているというのが、頼もしい。古家さんの事業者サイドから見た、いろんな問題点、アドバイスの話を聞くと私も役に立つ。だから、私も古家さんに、聞いたり相談したりする。
古家
ありがとうございます。
松尾
INPIT知財総合支援窓口の熊本窓口を受託されたのも、あれは本当に我が事のように喜びましたよ!古家さんは、水を得た魚のようなものだと思った。熊本は、古家さんという人がいるから、全国でも指折りの受託業者になっていくと思います。古家さんと共に熊本で知財活動ができることは楽しみです。
古家
だから、先生、これからも、まだまだ引き続きご一緒してください。
松尾
まだまだ本人は40代、50代くらいの気持ちだから(笑)。楽器とかまだやりたいことあるし。
古家
コロナあけたら、音楽会もやりましょうね。先生、本日は、久々に真面目なお話ができて嬉しかったです。ありがとうございました。
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(文・ 村上加余子 写真・柊木堂)